時効中断の判断

IMG_0205こんにちは。昨日は岸和田の法務局に行ってきました。

初めて行く法務局だったのですが、駅からとても近かったので道にも迷わず無事到着。写真は法務局を正面からとった写真です。

ところで最近時効援用の依頼を受けて、某大手消費者金融に内容証明を送付しました。

その後、時効の援用についてなにか反論があるか電話したところ、業者の方から「時効中断しています。」という回答がありました。

「中断事由として、和解や一部返済があったという事ですか?」と聞いたところ、「分割弁済の話し合いをしました。」とのこと。

「ではその際の和解契約書等を当事務所までファックスしてください。」とお願いすると

「口頭での話し合いしかしていません。」

と言うので

「その話し合いをテープとかで保存されていますか」

と聞くと

「テープはとってません」とのこと。

という事は時効中断の証拠が全くないじゃないかと思い、「わかりました。」といったん電話を切って、依頼者の方に連絡したところ「業者とそんな話し合いは一切していない。」とのことでした。

時効の中断は、時効の援用という抗弁と両立しつつ、当該抗弁により生じる法律効果を消滅させるため再抗弁にあたり、その主張立証責任は業者の方にあります。

そのため、時効中断に該当する事実(時効期間進行中の和解とか一部弁済とか)を証明できない場合、結局時効の抗弁が通るので、債務者側が裁判でも勝訴できます。

こちらから時効による債務不存在の訴訟を起こしてもいいのですが、費用がかかるので結局内容証明の送付のみで業務終了という事になりました。

時効を援用する場合、上記のような時効の中断等の反論がないか、またその反論について証拠があるかといった事情も業者に確かめておいた方がいいと思います。

もし時効が中断していて証拠もあるということになりましたら、裁判で負ける可能性があります。そうすると時効援用後から業者が裁判を起こしてくるまでの遅延損害金も更にオンされて支払わなければならないリスクを伴うことになります。

破産手続きにおける保証債務と債権者名簿

おはようございます。昨日は、司法書士会で成年後見の研修でした。朝から夜までの長丁場の研修なので、帰りはくたくたになりました。来週の土日も丸一日研修なのでしっかり睡眠をとってベストな状態にしとかないとです。

先週は自己破産の申請にあたって保証債務を除外できるかという相談が続けてありました。

確かに保証債務を債権者名簿に載せると借主に迷惑をかける事もあるので、以前からこのような要望はよくあり、非常に苦慮するところです。

しかし、残念ながら破産法上は一部の債権者を除外するという事はできない事になっています。

まず、保証人の債権者も破産手続きに参加する事が認められています(破産法「以下、法令名省略します」105条)。にも関わらず、破産者が保証債権がある事を知りながら債権者名簿に載せなかった場合、当該保証債権は免責されません(253条1項6号)。

その後に借主の方がギブアップしてしまった場合、せっかく破産手続きをしたにも関わらず、保証人の方に一括請求がいくので、この事が原因でまた借金が増えてしまう可能性があります。

また、そもそも252条1項7号は虚偽の債権者名簿を提出する事を免責不許可事由としています。そのため一部の債権者を除外して破産手続きを申請すると、当該債権だけでなくすべての借金が免除されないという可能性もあります。

確かに保証人が破産すると、借主は代わりの担保を立てることが要求されています(民法450条2項)。そして担保を立てることができない場合、期限の利益を喪失してしまいます(同137条3号)

しかし上記のようなリスクを抱えてまで保証債務を除外するというのはやはりやめておいた方がいいと思います。そのため、保証人としては、自己破産を申請するとなった場合、保証債務も手続きの対象になることを早期に借主の方に報告して対応策を練ってもらうのが賢明でしょう。

住吉東での無料相談会

IMG_0102おはようございます。最近の大阪は寒さも和らぎ、とてもすごしやすい日が続いています。

明日の日曜日ですが、住吉東駅の「大阪市立市民交流センターすみよし北」で無料相談会を実施します。

場所   大阪市立市民交流センターすみよし北
〒558-0054 大阪市住吉区帝塚山東 5-3-21
TEL 06-6674-3731 / FAX 06-6674-3710

開催日 11月17日 日曜日 13時30分~16時30分まで

開催会場 101号室(一番右奥)

相談員 行政書士 峰粧子  司法書士 小林一行

相談内容 相続、成年後見、帰化、借金問題等、生活問題全般

峰先生は、行政書士歴19年の先生で、帰化手続きのスペシャリストです。その他では相続問題(遺産分割、遺言)についてもとても詳しいです。

先生は行政書士業以外にも手相占いを専門とされています。

今まで何人も僕の知り合いを先生にみていただいたのですが、皆さん口を揃えて、「なんでわかるんですか!?」の連発でびっくりするくらいあたります。

僕も初対面の頃に見ていただいたにも関わらず、今までの僕の人生を見ていたかのようにこわいくらい当てられました。

とても多才な先生です。僕も開業した当初からいろいろと実務でわからないことを教えて頂いている大先輩でしていつも頼りにしています。

明日は特に予約は不要ですので、暮らしのちょっとした困りごとをお持ちの方はお気軽にお越しいただければと思います^^

行政書士峰先生のホームページです→大阪の行政書士|帰化申請相談センター

借金の一部返済後の時効援用

DSC_0063こんにちは。一気に冬モードに突入しましたね。事務所では初ストーブでした。

借金の時効について中断事由をチェックに続きまして時効ネタです。

時効期間(たとえば5年)が経過しても債務者(消費貸借の場合、借り手のことです)が、時効を援用しないと借金は消滅しません。借りたお金はすべて返したいと考える方もいらっしゃるので、時効を主張するか否かを本人の意思に任せる趣旨です。

そして、時効を援用するためには、時効期間経過後、借金(債務)の存在を承認していない事が必要とされているのが原則です(時効期間の経過を知っていると否とを問わず)。

なぜなら、債務者が借金の存在を認める挙動(たとえば借金の一部を弁済する等)をとった場合、債権者としては、以後時効の援用はされないであろうという期待が生じ、その期待を保護すべき要請が出てくるからです。

そして、相手の期待とか信頼を法律用語では「信義則」とか言ったりします。判例もこの信義則を理由に時効期間経過後、一部弁済をした債務者の時効の主張を排斥しました(昭和41年4月20日最高裁判決)

この昭和41年の判決は、法律の勉強をした人なら一度は見たことのある有名判例ではないでしょうか。

しかし、下級審判例で最近、債務者の一部弁済後の時効援用を認める判決がいくつか出ているようです。

たとえば東京簡易裁判所平成25年3月15日判決は、債務者の一部弁済後の時効援用を認めました。

もっとも、この判例も昭和41年最高裁判決を前提としており、同判決と異なる判断を示したわけではありません。

41年最高裁判決は、前述のように信義則を理由として、債務者の時効援用を認めていません。

逆に言えば、一部弁済後の時効援用でもそれが信義則に反しないようなものだったら、時効援用を認めても昭和41年判決の射程に属するものといえるでしょう。

本事例でも、昭和41年判決の規範(信義則)を前提としたうえで、債務者は、債権者の半ば脅迫的な取立てを逃れるために仕方なく2000円だけ払ったこと、5年で時効の本件においてすでに10年もの年月が経っていたこと、債務者が債務の承認をしてから一か月も経たないうちに、訴訟を提起していることなど本件の特殊事情を考慮して、債務者の時効援用を認めました。

よく債権者が債務者の不知に乗じてとりあえず少額の弁済だけさせて債務を承認したことにさせたり、時効期間を偽って、本当は時効期間が経過しているのに、時効期間はまだ経過していないと言って弁済させたりするのも、債権者に法的保護に値する期待があるとは言えません。

このような場合も前述の昭和41年判決(信義則を理由としたからこそ時効援用を認めなかったという規範)からすれば、時効の援用は認められる可能性があるので、あきらめてはいけません。

過払い訴訟の移送申立て

こんばんは。今日も暖かくていい天気でしたね。またすぐに寒い冬がくるのかと思うと、このわずかな秋をもう少し楽しみたいです。

以前、受任していた過払いの案件ですが、民事訴訟法上の移送について試みた事がありまして、今日はこの案件について述べたいと思います。

裁判所というのは全国にたくさんあります。そして、どの裁判所に訴えるかというと、原則は被告の住所を管轄する裁判所になります。

いきなり訴えられる被告としては、遠方の土地まで裁判に行かなければならないというのは酷なので、訴えた方が被告の住所地まで出向くのが公平という趣旨です。

一方で特例として、原告の住所を管轄裁判所に訴えが認められる場合もあります。

過払い訴訟もその特例が認められます(民事訴訟法5条1号)。

では、原告(あるいは被告)の代理人の住所に管轄が認められることはないのでしょうか?

なぜ、このような問題提起をしたかというと、過払い訴訟の場合、原告は弁護士や司法書士といった法律専門職に代理を依頼するケースが多いからです。

私の依頼者の方も鹿児島の方でした。被告は東京の会社です。そして、私は大阪に事務所があります。

この場合、管轄が認められるのは、上記のごとく、東京と鹿児島の裁判所になります。

代理人が裁判所に出張した場合、交通費を依頼者の方に請求することになるので、少しでも交通費の安い東京に訴えを起こしました。

その上で、東京簡易裁判所から大阪簡易裁判所へ事件を移送(管轄の裁判所をかえてもらうこと)してもらえないかの申し立てをしました。

私が根拠条文としたのは、下記の民事訴訟法17条です。

(遅滞を避ける等のための移送)

第十七条  第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。

この規定によると、当事者の衡平を図る場合は移送が認められるとしています。

複数の債務を負われている方と、全国各地に支店があり、東証一部にも上場している企業では、その資金力において圧倒的な差があります。

そのため、巨大な組織に権利を主張する場合、原告にとって、できるだけ訴訟のやりやすい(経済的負担の少ない)場を提供してもらうのが、この規定の趣旨に適合するのではないでしょうか。

しかし、実際は大阪への移送申立ては却下されました。

もちろん17条移送は、あくまで裁判所の裁量です。条文上、当事者に移送の申立てをする権利が認められているものの、当事者の権利として移送を認めているわけではありません。

ただ、前述のように巨大な企業では、どこの県にも支店があるわけで、大阪で裁判をしても特に不都合はありません。大阪支店の社員を代理人にすればいいのですから。それに加えて原告も交通費の負担が大幅に軽減されます。

もちろん、勝訴すれば、交通費も被告に請求できますが、それまでは原告の持ち出しになります。

という事で、移送を認めてくれてもよかったのではと思うのですが、なかなか裁判所に主張を認めてもらうのは難しいものです。私自身も民事訴訟法の勉強になった案件でした。

それでは、皆さまよい週末をお過ごしください!