過払い訴訟と期限の利益喪失の主張

こんにちは、大阪の司法書士小林一行です。

先週は払いすぎた過払い金について取り戻すための訴訟を起こしていたのですが、その口頭弁論があり大阪簡易裁判所に行ってきました。

業者(被告)の方は2日ほど返済日に遅れた日があって、期限の利益を喪失したからそれ以降の取引期間は遅延損害金利率による利息を請求できる。そのため当該利率で計算したら過払いにならないという主張をしてきました。

しかしこれは明らかに無理筋の主張かと思います。

まず、業者は契約書に1回でも遅れたら期限の利益が喪失されるという条項があることを理由にこのような主張をしているのですが、それではなぜ、借り手が支払を遅れた時に残りの貸付金の一括請求をしないのでしょうか。

それは、今後も一括請求をせずに分割で払ってもらった方が長い期間利息収入を得る事ができるからです。

しかし、過払いの請求をすると掌を返して、すでに期限の利益を喪失していたというのは矛盾した行動です。それならばそのような態度を従前から借り手に対して示しておくべきです。

しかも今回の原告は何年もの被告との取引の中でたった2日間、一回だけ支払が遅れたことがあったのみです。

更に、被告は期限の利益を喪失したと言いながら、何度もその後追加で原告に融資をしています。しかも支払が遅れた日の直近に。

普通、期限の利益が喪失して、今後は遅延損害金をすべて請求するという態度を示した相手に追加の融資をするでしょうか。

本来、利息制限法の趣旨は、業者と借り手に大きな力関係の強弱があることに鑑み、借り手が暴利をむさぼられる事のないよう、業者が取得できる上限金利を設定し、もって借り手の生活を保護しようとしたことにあります。

しかし、わずかな遅れがあっただけで、その後も取引を継続し、利息制限法を超えた金利を取得し続けるというのは明らかに同法の趣旨に反するでしょう。

そのため、徹底抗戦で期限の利益喪失の主張には争っていくつもりです。裁判官も「期限の利益を喪失した後、なんで追加で融資しているのですか?」等かなり被告に突っ込んだ質問を繰り返しており、被告の主張に相当違和感を感じているのが見て取れました。

少ない借金の自己破産

こんにちは、大阪の司法書士小林一行です。

借金の総額が70万円ほどの方の自己破産の手続きを進めていたのですが、このほど無事自己破産の開始決定が認められました。

この方は以前に他の事務所に相談したところ、借金の額が少ないので自己破産は難しいとの理由で断られたそうです。

しかし、自己破産が認められるかは借金の額だけで決まるわけではありません。もちろん支払不能が認められるかについて重要な判断要因(ファクター)になることは間違いありませんが。

破産法では、自己破産が認められるための「支払不能」について、債務者が、支払能力を欠くために、その債務のうち弁済期にあるものにつき、一般的かつ継続的に弁済することができない状態とされています(同法2条11項)

そして、この支払不能の認定においては、借金の総額や、債務者の資産の有無、その額、収入や毎月の生活費、返済額等を総合的に考慮して判断します。

なぜなら、借金がどれだけ多くても、かなりの収入がある人に自己破産を認める必要はないですし、逆に少ない借金でも収入がなければ返済しようがないからです。

実際にご相談に来られ方も現在無職で収入がなかったため、借金が70万円であったとしても返済しようがありません。そのため、このような場合は特に資産等がなければ原則自己破産は認められます。

収入が少ない場合は少しの借金でも生活費を圧迫します。そのため、積極的に自己破産の手続きを利用することで、無理のない生活を送れるようにしていただければと思います。

それでは、皆様よい週末をお過ごしください。

小規模個人再生と給与所得者等再生の比較

こんにちは、大阪の司法書士小林一行です。

最近は債務整理でご相談に来られた方で、個人再生(民事再生)を選択される方が多くなりました。元金が圧縮(原則5分の1)されるので、毎月の支払が大幅に楽となるため、どうしても自己破産は回避したいという方にはお勧めです。

個人再生には、小規模個人再生と給与所得者等再生という2つの選択肢があるのですが、どちらを選択すべきかについて、基本的には小規模個人再生を選択すべき案件が多いかと思います。

なぜなら、給与所得者等再生の場合は、可処分所得の要件が定められており、借金が元金の5分の1まで圧縮されないケースが想定されるからです。

特に独身の場合は、生活費があまりかからないような計算がされるので、可処分所得が多くなり、借金もあまり減額されない方向になりやすいです。

もっとも、例外的に給与所得者等再生を検討すべき場合もあります。それは債権者数が少ない場合です。

なぜなら、小規模個人再生の場合、債権者が一定の割合(総債権者の半数以上か、総債権額の2分の1超)で再生計画案に反対の書面回答を行うと、再生計画の不認可の決定がされるからです。

たとえば債権者数が2人とかの場合、1人が反対するとこの要件が満たされません。

これに対して債権者数が多いような場合はあまりこういう問題は生じません。なぜなら、そもそも債権者が再生計画案に反対することが少ないからです。

おそらく反対すれば民事再生が不認可となり、自己破産しか道がなくなるので、債権者から見ればより債権の回収額が減るからでしょう。

また、債権者数が多い場合は、一人くらいの反対でも計画案は通るので、あえて手間をかけてまで計画案に反対の書面を提出しないという面もあるかと思います。

それに対して、債権者数が少ない場合は、各債権者の議決に対する影響力が高まるため、積極的に反対の意思表示を示す可能性も高まります。

そのため、小規模個人再生の申立てをする前に反対の意思を債権者に確認し、一定数の同意が見込めない場合は、給与所得者等再生を検討すべき必要もでてきます。

ただし給与所得者等再生には、小規模個人再生にはない要件もあるので注意が必要です。

例えば、給料等毎月の収入額が安定していることや、過去に破産の免責決定の確定を得てから7年以上たっている事などです。

このような場合は、給与所得者等再生が認められないので、半数の決議等も得られないような場合は個人再生が難しく、自己破産や任意整理等、他の債務整理方法を検討せざるえないという事になります。

2回目の自己破産

こんにちは、大阪の司法書士小林一行です。

最近、一度自己破産をしているのですが、もう一度自己破産できますか?というご相談を受けました。

結論から言うとできます。ただし前回の自己破産がいつだったかによります。

破産法252条1項10号イが、前回の免責許可決定の確定から7年以内の免責許可の申立てを免責不許可事由としているからです。

そのため前回の自己破産から7年間は自己破産ができません。

厳密にいうと、自己破産自体は短期間のうちに何回でも可能で、7年の制限がかかるのは免責申立ての方です。自己破産というのは支払不能と判断される場合に、財産を債権者に分配する手続きで、借金を免除してもらう免責許可の申立てとは一応別の手続きだからです。

しかし一般的には借金の免責を認めてもらうために自己破産の申立てをしているので、7年間経っているかどうかはとても重要な判断要素です。

この点、条文の構造だけを見ると、7年の期間制限にかかる場合でも裁判官が裁量で免責を認めることは可能です(裁量免責を定めた252条2項が、免責不許可事由を列挙している同1項各号のすべてについて免責可能であることを定めているため)。

しかし、あえて7年間という画一的に短縮した期間を定めた趣旨(従前は10年でした)からすると、負債の増加にやむをえなかった事情等がない限り、7年以内の再度の免責許可は相当難しいでしょう。

期間制限で、自己破産の免責が難しい場合でも、任意整理や個人再生といった他の債務整理手段で借金の整理は可能です。

特に個人再生の場合、負債が500万円以下の場合、原則100万円まで借金が圧縮されるので毎月の支払はだいぶ楽になるかと思います。

任意売却と保証人の同意

こんにちは。大阪京橋の司法書士小林一行です。

今、自己破産のご依頼を受けている依頼者の方ですが、任意売却の手続きを進めています。

不動産の競売手続きに移行するより依頼者の方のメリットが大きいため、通常は自己破産の申請前に不動産を任意で売却してしまうのが一般的です。

しかし、この不動産を売却するためには、不動産の所有者だけでなく、保証人の同意書も必要となるため、住宅ローンに保証人がついている場合は少々やっかいです。

今回のケースでも自己破産の申請をされる依頼者の方は保証人と久しく連絡をとっていなかったため、携帯番号がわかりません。

そのため、とりあえず保証人の方に任意売却の同意書にサインをしてほしい旨のお手紙を送る事になりました。

裁判所での競売と異なり、任意売却ですと通常不動産は高く売れるので、その分保証人の負担も縮減できます。そのことをしたためてあとは連絡がくるのをひたすら祈るばかりです。

そうすると祈りが通じたのか数日後に保証人の方からご連絡をいただき、快く不動産の売却の方に同意してくださいました。

これで無事、任意売却を進めていくことができます。

いやー祈りは通じる!そんなふうに思った一日でした。