時効の援用までの業者とのやり取り

こんにちは。今日から一気に気温が下がりましたね。暑いくらいの日が続いていたので、ちょうどいいとも言えるのですが、いよいよ冬の到来を感じさせる一日でした。

前回の続きですが、時効になっていれば内容証明をだします。もっとも、業者から来た明細だけを見ても時効になっているかわからないケースがあります。

単純に最後の返済から5年経っているかは明細を見ればわかりますが、裁判等をおこして時効の進行が中断している場合もあるからです。

この点、業者によっては、事件番号とかで特定して勝訴判決とかを取ってる事を丁寧に明細に書いてくれている場合もあります。

そのような場合はいいのですが、書いてない場合は、業者に電話して時効中断事由があるか聞く必要があります。
そうすると、時効中断事由のある業者は勝訴判決文のコピーなんかを送ってくれたりします。
その場合は当該業者に時効の主張をする事は諦めるしかありません。

ところで、時効中断事由の有無を電話で聞くと、業者の中には時効援用の内容証明を送ってくれないと、時効中断事由があるか回答できないとかわけのわからない事を言ってくる場合があります。

いやいや、時効になってるかどうかわからないので、内容証明だすかどうかの判断ができないから電話で先に聞いてるんじゃないの?と思うのですが。。

業者の言い分としては、実際に起こした訴訟等が時効中断事由にあたるか否かは、法的判断を要することなので、内容証明の到着を待って回答するという事のようです。

しかし私が聞きたいのはその訴訟とかが、時効進行の中断にあたるかどうかという事ではなくて、実際に訴訟を起こして勝訴判決を取ったり、その他の債務名義を取得していたのかという過去の事実を聞いているだけです。

それは取引に類する事実で当然回答するべきでしょうと。その回答いかんで今後の債務整理の方針が決まるわけですから。

この業者の場合、電話でしつこく粘ったところ、結局時効中断事由はないという事で内容証明を出すことにおさまりました。

実際はこのような回答拒否をしてくる業者はきわめてまれで、ほとんどの業者が書面できっちり時効中断事由の有無を回答してくれます。

時効か、自己破産か。

最近ご相談が多いのが、時効問題です。

複数の業者から、借り入れをしている場合、全業者が時効になっていればいいのですが(一般的には最後の取引から5年経過で時効)、一社でも時効が中断されている業者があれば、問題が生じます。

中断の典型例は訴訟を起こされていた場合です。この場合、判決からさらに10年間は時効にかからない事となりやっかいです。

時効が中断していれば、長年支払をしていなかったため、遅延損害金の額もかなり膨れ上がっており(数百万単位)、かつ業者も勝訴判決をとってるので強気です。分割和解に応じないこともよくあります。

そうすると、1社以外は全て時効にかかっている場合でも、家計の状態次第では、時効にかかっていない1社のために自己破産へと方針変更しなければならないケースがあります。

 そういう問題がありますので、当事務所でも長年支払を放置していたような案件では、受任時に債務整理の方針を決定しません。

 受任から23ヶ月後くらいには業者の現在の債権額、時効中断の有無、分割和解に応じるか、その回数等の情報がわかりますので、それをもとに再度打ち合わせをさせていただきます。

その上で全ての業者が時効にかかっていたので、時効援用でいくか、あるいは中断している業者があるので、自己破産や個人再生でいくか等を考える事になります。

 一番いいのは依頼者の方の費用負担が少ない時効援用です。内容証明を各業者にだすだけですから。

 しかし1社だけは、しっかり裁判を起こしていて時効が中断しており、そのために自己破産を余儀なくされる場合も多いです。

退職金と自己破産

会社に雇用されている労働者の方が自己破産をする場合、退職金債権をどのように扱うかが問題になります。

仮に会社を辞めたとしたら、もらえるであろう退職金は破産者の資産です。

そのため、会社を強制的に退職して作った退職金を債権者に分配しないと自己破産が認められないのではないかとも思えます。

この点ガチガチの法律論からいくと破産法は、管財人による契約解除権を認めています。

同法53条1項 双務契約について破産者及びその相手方が破産手続開始の時において共にまだその履行を完了していないときは、破産管財人は、契約の解除をし、又は破産者の債務を履行して相手方の債務の履行を請求することができる。

労働契約も将来の給付に関しては双方未履行といえるので、当該条項が適用されるからです。

そして、債権者に公平に破産者の財産を分配するためには、管財人は積極的に解除権を活用して、破産者と勤務先との労働契約を解除すべきとも思えます。

しかし、一方で労働契約は他の契約と異なり、労働者の生活の糧をなすものです。当該契約を安易に解消できるというのでは、労働者の地位は著しく脅かされます。ここでは、憲法、労働法上の解雇権濫用の法理が働き、労働者の破産をもって、当該労働契約は解除できないと解するべきです。

そのため、実際の破産実務でも、労働契約の解除まではなされず、退職金に相当する額(実際は、差し押さえ禁止財産としての側面や将来の倒産可能性も考慮して8分の1に相当する額 大阪地裁の場合)を収めればいいことになっています。

もっともこの、8分の1に相当するお金をどのようにして用意するかという問題は残ります。実際当事務所でも、同様の事例があったのですが、勤務先から借り入れをしてもらう事で、対応していただきました。

破産手続き中の借入のため、免責不許可事由に該当するともいえるので、一応裁判所に勤務先から借り入れすることの上申書を出して許可をもらってから借り入れをしました。

破産手続き中の借り入れが問題とされるのは、他の債権者の弁済に充てられる事で債権者間の公平を害する事や、免責がされることを前提に借入れをする事が詐欺的な行為だからです。

しかし、勤務先は退職金債権が担保になっているため、破産者に貸し付けをしても将来回収が容易です。また、破産財団に組み込む(それがひいては各債権者に公平に分配される)ために、借入をしているので、債権者間の公平を害するとはいえないでしょう。

この点、破産法72条2項4号は、破産者に対して、債務を負う者が、破産者との間で契約をする事により破産債権を取得する事について、相殺禁止事由から除外しています。これは新規貸し付けをする者が回収不能リスクを負担していないことから、認められたものであり、本件のような勤務先からの借り入れにもあてはまるものといえるでしょう。

もちろん、毎月少しずつお金を貯めることができるならば、毎月の積立金で退職金相当額を収めるという方法もあります。しかし裁判所も長期の分割には応じてくれません。依頼者の方は収入から支出を引いたらお金がほとんど残らない家計の状態だったので、このような借り入れをせざるえなかったという面があります。

債務整理で車を残せるか。

事務所では、無料相談を実施しておりますので、とりあえずは相談だけに来られるという方も多いです。そして債務整理のご相談で多いのが、手続き後も車を残したいとうものです。

この点、車を分割で購入した場合は所有権が業者に留保されているので、当該車を返還しなければならないのが原則です。

もっとも任意整理の場合はあくまで司法書士と業者の私的な話し合いです。そのため毎月の原資が許すかぎり、車の債権者を任意整理の対象から除外する事で、当該車を残せる場合があります。

また自己破産や個人再生のように債権者平等の原則が働くため一部の債権者お除外できない場合でも、以下のようなスキームにより実質上車を残せるケースがあります。

まず車のローンを組む際にご両親等が、当該ローンの保証人になっているケースがあります。

そのような場合、保証人はローンの返済をする正当な第三者であるため、かわりに車の残ローンを返済することができます。

そうすると、あとは車のローンについては以後は保証人が債権者となります。

またそれと同時に車の所有権も保証人に移ります。 そのため、あとは保証人と賃貸借契約を結んで車を借りれば、当該車を利用し続ける事ができます。

もっともこのような方法を取ることは当然保証人の協力がないとできないことです(保証人の立替債権はその後、自己破産や個人再生の決定で大幅に債権が減額あるいは免除されてしまいます)。

また、車を維持することには今後も相当な維持費がかかるため、本来は債務整理の手続きで処分するのが原則です。

上記のような方法で車を残すのは、病気や仕事のために当該車を維持することがどうしても必要不可欠な場合に限って検討すべきだと思います。

ゼロ和解の強要

DSC_0002こんにちは、大阪京橋の司法書士小林一行です。

先日過払いの相談があったのですが、相談者の方はご自身でアコムから過去の明細を開示してもらっていました。

そして届いたものを拝見させていただくと、明細だけではなく写真のような合意書も添付されていました。

これは約定の借金をすべて免除するかわりに過払い金の返還義務もすべて免除するという趣旨のものです(実務上ゼロ和解といいます)。

このような書面にサインするとせっかく取り戻せるはずの過払い金が取り戻せなくなる可能性があります。

しかし、それでもサインしてしまう方がかなりいるようです。今まで払わなければいけない借金がなくなるだけでも得したと思ってしまうからです。

約定の残を消滅させるだけではなく、払い過ぎていた過払い分も取り戻さなければいけません。今回の相談者の方はたまたま電話相談の段階から業者から来た書類には一切サインしないようにと私がアドバイスしていました。そのため、サインする前に書類を事務所に持ってきていただき事無きをえました。

調査した結果問題なければサインは後からでもいつでもできますので、まずは和解契約をする事に問題ないか事前に専門家にご相談いただければと思います。