こんばんは。今日も暖かくていい天気でしたね。またすぐに寒い冬がくるのかと思うと、このわずかな秋をもう少し楽しみたいです。
以前、受任していた過払いの案件ですが、民事訴訟法上の移送について試みた事がありまして、今日はこの案件について述べたいと思います。
裁判所というのは全国にたくさんあります。そして、どの裁判所に訴えるかというと、原則は被告の住所を管轄する裁判所になります。
いきなり訴えられる被告としては、遠方の土地まで裁判に行かなければならないというのは酷なので、訴えた方が被告の住所地まで出向くのが公平という趣旨です。
一方で特例として、原告の住所を管轄裁判所に訴えが認められる場合もあります。
過払い訴訟もその特例が認められます(民事訴訟法5条1号)。
では、原告(あるいは被告)の代理人の住所に管轄が認められることはないのでしょうか?
なぜ、このような問題提起をしたかというと、過払い訴訟の場合、原告は弁護士や司法書士といった法律専門職に代理を依頼するケースが多いからです。
私の依頼者の方も鹿児島の方でした。被告は東京の会社です。そして、私は大阪に事務所があります。
この場合、管轄が認められるのは、上記のごとく、東京と鹿児島の裁判所になります。
代理人が裁判所に出張した場合、交通費を依頼者の方に請求することになるので、少しでも交通費の安い東京に訴えを起こしました。
その上で、東京簡易裁判所から大阪簡易裁判所へ事件を移送(管轄の裁判所をかえてもらうこと)してもらえないかの申し立てをしました。
私が根拠条文としたのは、下記の民事訴訟法17条です。
(遅滞を避ける等のための移送)
第十七条 第一審裁判所は、訴訟がその管轄に属する場合においても、当事者及び尋問を受けるべき証人の住所、使用すべき検証物の所在地その他の事情を考慮して、訴訟の著しい遅滞を避け、又は当事者間の衡平を図るため必要があると認めるときは、申立てにより又は職権で、訴訟の全部又は一部を他の管轄裁判所に移送することができる。
複数の債務を負われている方と、全国各地に支店があり、東証一部にも上場している企業では、その資金力において圧倒的な差があります。
そのため、巨大な組織に権利を主張する場合、原告にとって、できるだけ訴訟のやりやすい(経済的負担の少ない)場を提供してもらうのが、この規定の趣旨に適合するのではないでしょうか。
しかし、実際は大阪への移送申立ては却下されました。
もちろん17条移送は、あくまで裁判所の裁量です。条文上、当事者に移送の申立てをする権利が認められているものの、当事者の権利として移送を認めているわけではありません。
ただ、前述のように巨大な企業では、どこの県にも支店があるわけで、大阪で裁判をしても特に不都合はありません。大阪支店の社員を代理人にすればいいのですから。それに加えて原告も交通費の負担が大幅に軽減されます。
もちろん、勝訴すれば、交通費も被告に請求できますが、それまでは原告の持ち出しになります。
という事で、移送を認めてくれてもよかったのではと思うのですが、なかなか裁判所に主張を認めてもらうのは難しいものです。私自身も民事訴訟法の勉強になった案件でした。
それでは、皆さまよい週末をお過ごしください!