破産手続きでの相殺権の行使

こんにちは。今日新聞を見たら民法の改正が参議院で可決されたみたいですね。今の民法ができたのは100年以上前なので、時代にそぐわない規定がたくさんあります。

そういう意味では改正は必要なのですが、慣れ親しんできた条文とお別れするのはなんかさびしい気持ちもあります。受験時代からずっとにらめっこしてきた法律ですから。

さて、少し前に取引先が破産して債権が回収できなくなったという相談についてブログを書きましたがその続きです。

この場合、倒産会社に債務を負担していれば、相殺権の行使により破産手続きによらないで自力で債権を回収することがが可能です(破産法67条1項)。

では相殺権を行使する事について内容証明を出すべきでしょうか。

この点、相殺権の行使は一方的な意思表示のみで足りるので、書面まで出さなくても電話で行使する旨を伝えるだけで効力は生じます。

しかし、私はそれでも内容証明をだしておいた方がいいと思います。

なぜなら、民法上の相殺権と異なり、破産法上の相殺権は破産管財人の催告権の行使により消滅する事があるからです(破産法73条)。

これは、いつまでも相殺権が行使されるか否かわからない状態が続くと他の債権者との関係で破産者の財産の分配比率を定める事ができないので、破産手続きが停滞するのを避けるためです。

このように民法上の相殺権と異なり、破産法上の相殺権は権利自体が消滅する可能性があります。そのため、相殺権が消滅する前ににちゃんと権利行使した事を証明できるようにしておく必要があります。

それにはやはり内容証明が適していると思います。相殺権を行使した事も郵便局にばっちり記録として残りますからね。

なお、破産手続きが開始すると破産者の財産管理権は破産管財人に移行するので(破産法78条1項)、内容証明も破産管財人宛てに出すのがベターです。

相殺権を行使した以上、債権債務は対当額で消滅するので、それでもまだ相手方への債権が残るようでしたら、その債権額についてのみ債権届をするという事になります。

ちょっとした事ですけど、ちゃんと証拠を残して、あとで言った言わないでもめないようにするのが法律的にも精神衛生的にもいいかと思います。