こんにちは。今日も大阪はとてもいい天気です。
以下のような相談を受けました。
A社→相談者 B社→破産申請
A社はB社に約20万円、B社はA社に7万円の売掛債権を有しています。
破産管財人からA社に対して7万円を支払えとの請求が来たのですが払うべきなのでしょうか?という相談です。
このような場合、破産法上でA社には相殺権が認められています。
「破産法67条1項 破産債権者は、破産手続開始の時において破産者に対して債務を負担するときは、破産手続によらないで、相殺をすることができる。」
A社は、まるまる7万円を払わないといけないのに、B社に対する20万円の売掛金は破産債権の配当として、二束三文しか払ってもらえないというのは不公平ですからね。
ただし、相殺が禁止される場合もあるので、そのチェックは必要です。
破産法71条、72条に禁止されるパターンが列挙されています。
たとえば、破産手続が開始したにも関わらず、相殺に供すべき対立債権(債務)を取得した場合や、それ以前であっても、破産者が支払不能の状態であることを知っているにも関わらず、債権(債務)を取得する場合などです。
このように、破産者が危機的状況になってから、相殺に供すべき債権(債務)を取得するのは相殺の合理的な期待があるとはいえません。
破産手続きでは他の債権者との平等が強く要請されるところ、上記の場合にまで相殺を認めては一部の債権者が強引に相殺可能状態を作り出して、債権を回収できることになるからです。
相談者の方の場合、管財人からの請求の前に破産者の申立代理人弁護士から破産する旨の通知がありました。
そこで破産者が危機的状況になっている事実を知りました。相談者の方が破産者に債権、債務を有したのはそれよりも前なので、相殺は禁止されません。
そのため、相殺権の行使をすべきことや、管財人からの請求書に対する回答書の書き方などをアドバイスしました。
ところで、申立代理人に対して、A社は事前に債権を届け出ているので、管財人は相殺に供すべき債権をA社は有しており相殺権を行使してくるのは想定の範囲内ではなかったのかとも思えます。
それでも請求してくるのは、訴訟構造上、相殺は抗弁に属するからででしょう。
相殺権を行使するかはあくまで相殺権者の自由意思です。ガチガチの原則論からいえば、A社の債権は破産債権として届けたうえで、配当に甘んじ、破産財団が有しているA社への債権(7万円)はそのまま払ってもいいわけです。
そのようなこともあって、少しでも破産財団を増殖させ、債権者に公平な分配をする責務を有する管財人としては、破産債権者が相殺権を主張するまでは、破産財団に属する債権の行使をしてくるのでしょう。
相殺権の行使により、7万円を払わないでいい事を伝えるととても喜んでくれたので、なんだか僕の方もうれしかったです。