借金の時効と内容証明

おはようございます。新しい一週間が始まりましたね。

借金の時効期間が経過した場合、内容証明を業者に送った方がいいのかという相談を受けました。

私は、一般論としては、送付しておいた方がいいと思います。

確かに、日本の民法には、その根底になんらかの意思を表示するのに書面を要せず、口頭でもかまわないという考えがあります。そのため、時効の援用が有効に成立するために内容証明を送付することは要件とはいえず、口頭でもかまいません。

また内容証明を送付するには1社あたり、1500円ほどを郵便局に収める必要があるため費用もかかります。

しかし、内容証明を送付しておくと、時効の援用をしたことの証拠を明確に残すことができます。証拠を残すメリットとしては、あとで時効の援用をしたことを証明できない場合に困るケースが考えられるからです。

たとえば、時効期間が経過したあと、時効の援用を電話などの口頭でして、そのあとに、債権者につつかれて借金の一部弁済をしたとします。判例は一部弁済でも時効の利益を放棄したのと信義則上、同視しうるため、以後の時効の援用を認めていません。

そうすると、一部弁済の前に時効の援用をきちんとして、時効成立を確定させていたかが争点になってきます。

もし時効の援用をしたことを証明できなければ、時効の主張が認められないリスクがでてきます。そうであるならば、時効の援用をいつしたかという事実は、あとで争いになったときに備えて、明確に日付の証拠が残る内容証明で送付しておくのがベターということになります。

本当は、時効の援用をした場合、時効により債務が不存在となった旨の和解契約を債権者が締結してくれれば何の問題もないんですけどね。

しかしこのような和解に応じる債権者はまずいません。なぜなら債権者にとって何のメリットもないからです。これが借金がまだ残っていることを前提として、その分割払いの交渉をする通常の任意整理と異なる点です。

分割払いの場合は、債権者も利息がカットされたりするものの、融資分のいくらかはかえってくるので、和解交渉のテーブルに座る大きな動機があります。

これに対して、時効の場合は、債権がなくなるだけなので、わざわざそのような債務不存在の契約書に署名するメリットがありません。

そのため、契約書を作れない以上、時効期間が経過していた場合、最低限の証拠保存行為として、内容証明を送付しておいた方がよいというのが私見です。

それでは、今週も一週間はりきっていきましょう!