破産免責が確定するのはいつか

前回(破産の免責決定と確定)の続きです。

免責決定や破産手続き開始決定の確定する時期はいつと考えられるかです。

通常の貸したお金を返してくれといった訴訟の場合は判決がでてから、控訴等の不服申し立て期間が経過した2週間で確定します(民事訴訟法116条)。

また同法122条によると「決定」にも判決に関する規定が準用されるとあります。そのため、免責決定や開始決定の場合でも、考え方は同様となります。

しかし破産手続きの場合は官報にて公告というワンクッションが入るので少しややこしくなります。

まず、破産手続きでは多数の債権者を集団的画一的に処理する必要性から重要な決定では公告がされます。

そして、この公告の方法はいろいろ考えられますが(インターネットや民間の新聞等)、破産法に基づく公告は官報によって行う事が定められています。

破産法10条1項 この法律規定による公告は、官報に掲載してする。

官報とは、政府が発行している新聞のようなものです。

そして、破産手続き開始決定や免責決定も、不服がある人は即時抗告という形で不服を申し立てる事ができるのですが、その期間は公告が効力を生じた日から2週間とされています。

破産法9条 破産手続等に関する裁判につき利害関係を有する者は、この法律に特別の定めがある場合に限り、当該裁判に対し即時抗告をすることができる。その期間は、裁判の公告があった場合には、その公告が効力を生じた日から起算して二週間とする。

ここの構造が通常の民事訴訟による判決と異なるところです。判決の場合は判決書が当事者に「送達」されてから2週間とされています(民事訴訟法285条)

破産法の場合は、民事訴訟のように2当事者対立構造を基本としているのとは、異なります。集団の債権者を画一的に処理する必要から、この不服期間を「送達」ではなく「公告」にしているのです。

官報への公告は、破産手続き開始決定や免責決定があってから大体1週間から2週間以内にされているようです。

そしてそこから2週間は不服申し立て期間となりますので、トータルでは破産手続き開始決定や免責決定があってから、遅くとも1か月以内で同決定は「確定」します。

この免責確定により晴れて、借金の支払義務がなくなったり、資格の制限がなくなったりする効力が生じます。

破産の免責決定と確定

破産手続きにおいて、借金等の支払義務が全て免除される「免責」ですが、具体的に免除される時期がいつかというのが問題になります。

これは裁判所から免責の決定がでたときではなく、その免責決定が「確定」したときからとされています。

破産法253条1項 免責許可の決定が確定したときは、破産者、破産手続による配当を除き、破産債権について、その責任を免れる。

この他にも、免責だけでなく確定まで生じているかが問題になる場面というのはいろいろあります。

例えば破産による免責は前回の破産免責から7年たっていれば認められますが、この7年の起算点は前回の免責決定からではなく、免責決定の「確定」した日からです。

破産法 252条1項 裁判所は、破産者について、次の各号に掲げる事由のいずれにも該当しない場合には、免責許可の決定をする。

同項10号 ~一部省略~ イに定める日から7年以内に免責許可の申立てがあったこと。

イ 免責許可の決定が確定したこと 当該免責許可の決定の確定の日

また破産者になると一定の職業に就けない等の資格制限がありますが、この制限が解除される復権も免責許可の決定だけでなく、その決定が「確定」したことまで必要です。

破産法255条1項 破産者は、次に掲げる事由のいずれかに該当する場合には、復権する。

同項1号 免責許可の決定が確定したとき。

免責と同様に破産手続きで重要なポイントが「破産手続き開始決定」です。

この決定も同様に「確定」が問題となる場面があります。たとえば、自由財産の拡張申し立ては破産手続き開始決定が「確定」してから1か月を経過すると原則できません(破産法34条4項)。

このように破産手続きでは重要な概念である「確定」ですが、これはいつ生じるのでしょうか。

破産法上とてもややこしい条文操作が必要なのですが、長くなってきましたので次回のブログでこの点について掘り下げていきたいと思います。

不動産がある場合の生活保護

新年明けましておめでとうございます。

年明けにさっそく生活保護のご相談をいただいたのですが、ご自身で申請に行ったところ不動産があるので生活保護は認められないと言われてしまったそうです。

この窓口の対応はよく耳にするのですが大きな間違いであり、かつ問題があります。

国民は誰しも健康で文化的な最低限度の生活をすることが憲法上保証されています。

この生活の中心をなすのは衣食住です。たしかに不動産があれば雨風をしのげる「住」は確保できています。

しかし、住むところがあるからといって食べて行くことができるのか?ということです。もちろんできません。お金がなければ朝昼晩の食材は買えません。

たしかに不動産を売ればお金を作ることができます。しかしいつ売れるかなんてわかりません。売れるまで食べずに生きていけというのかということです。

そのため、不動産があっても日々の食材を購入するための収入や貯金がなければ生活保護が認められるのは明らかです。

もちろん財産があればまずはそれを生活費にあてるべきですので、不動産は売却するように指導されます。しかし売れるまでは当然に最低限の生活費をもらえるのです。

いくらもらえるかですが、不動産が売却されるまでは家賃がかかりませんのでその額を引いた分の支給となります。

おおまかですが、1か月の支給額は12万円が1人暮らしの目安ですので、家賃相当分4万円を引いた8万円くらいが毎月支給されるという事になります。

それでは本年度もよろしくお願い申し上げます。

奨学金と収入認定

今日、子供の奨学金を理由に親の生活保護費が減額されたというのがニュースになっていました。

この市の決定はかなり問題があると言わざるをえません。

たしかに、収入があればその分生活保護費が減額されるのはわかります。

しかし、奨学金はそもそも収入ではありません。借りたお金ですので返す必要があります。もちろん利息をつけて。また、遊ぶお金を借りているわけではありません。学業を身につけるという正当な理由のために借りているのです。このお金は当然授業料等にあてられるので、生活費は苦しいままです。

生活保護の大原則は、収入を得る事ができない人のために最低限の生活を保障することです。そうであるならばその収入とは当然返す必要のないお金のことです。簿記を語るまでもなく、現金が入っても、同額の借入金が増えるので、純資産はなんら増加しません。このような性質のものを収入として認定するのは、生活保護の趣旨からいってもおかしいです。

本件では受給者の方が市を相手に処分の取り消しを求めて提訴したようですが、裁判所はぜひ生活保護の現状をくみ取った良識ある判決をしていただきたいと思います。

民法の改正

こんにちは、大阪京橋の司法書士小林一行です。

昨日夜のNHKニュースを見てると、民法改正がテーマにあげられていました。

以前から民法の改正というのは、業界で話題になっていたのですが、NHKでニュースになるという事はいよいよ改正も現実味をおびてきたなという感じがします。

改正内容で僕が個人的に気になったのは、法定金利が年利5%から3%に変更されるというものです。

低金利下時代に5%は取りすぎじゃないかという事らしいですが、不当利得を助長する事にならないか若干心配です。

というのも業者に過払いの請求をすると、大体減額の提案をしてくるのですが、それを断ると、裁判になったら長期化してなかなか過払い戻ってきませんよと反論してきます。

そんな時は決まって僕は以下のように再反論します。

「ご本人さんは、過払いの元金だけでなく、返金までの利息もすべてつけてもらう事を希望しています。この低金利の世の中、銀行に預けていても利息なんて二束三文ですよ。それならば裁判中御社に過払い金を預かってもらっておけば年利5%の運用利息がつくので、銀行に預けるよりよっぽどいいと思います。裁判を長引かせれば長引かすほど、御社の負担はどんどん大きくなっていきますよ。」

これが3%になると業者の負担がその分減ってしまいますから、過払いをなかなか返さない方向になるかもしれません。

それともうひとつ気になったのが、時効が一律5年になるというもの。過払いのご相談に来られる方は完済から結構期間がたっていることも多く、現行の10年を経過しているというケースもよくあります。

それが、5年になると、さらに過払い請求が封鎖される事になり、不当に業者を利得させることになるのではないかと思います。少なくともこのような消費者被害の事例においては時効の特例を認めるといった処置も検討されるべきではないでしょうか。

消費者は、強者である企業と対等な立場でなかなか契約できません。そのような社会的実情をふまえた改正内容にしてもらいたいと思います。