過払い訴訟に対する逆調停

こんにちは大阪京橋の司法書士小林一行です。

なにかとバタバタしていましてだいぶブログの更新が遅れてしまいました。

A社に対して過払いの訴訟を起こす予定なのですが、ひとつ大きな問題が発生しました。

もともとA社は提示額がきわめて低いので、任意での和解は難しく訴訟を起こす旨を担当者に伝えると、それならばこちらは依頼者を相手取って調停を起こすとのこと。

正直このようなA社の対応は理解に苦しみます。相手の言い分としては、過払い額を減額してほしいからとのことなのですが、そのような主張は訴訟の場でも自由に述べることができます。

にも関わらずあえて調停を起こすというのは、依頼者への嫌がらせ以外のなにものでもありません。調停を起こせば、依頼者のご住所へ調停の申立書が届きます。そうすると家族に借金をしていた事実がばれてしまいます。

ばれるのが嫌なら訴訟をするなという事です。

私「そのような調停は本人の家族に知られてしまい精神的苦痛を生じるので不法行為に基づく損害賠償も請求しますよ」

と伝えると

担当者「調停の申立書を送るのは裁判所の判断でやってる事なので、私たちの関与することではありません」

と。

「いやいや!調停起こしたら、相手方に防御の機会を与えるために、裁判所が申立書を郵送するのは当たり前じゃないですか。郵便物が依頼者の住所に届くようにする意思を決定しているのはどこまでいってもA社さんですよ。」

と言っても

「社の方針なので」

の一点張りです。話にならないので、その場で電話を切りました。

A社のこのような行為は悪質なので、調停を起こさないように求める内容証明を送って、損害賠償の証拠を作ってから訴訟を起こすことも考えました。

しかし、そうだとしても結果的に調停を起こされてはやはり依頼者の方にご迷惑をかけてしまいます。

こちら側から先手を打って調停を起こすことも考えています。

さすがにこちらからA社の管轄裁判所に調停を起こせば、A社から依頼人の管轄裁判所に調停を起こすという無茶苦茶なことはしないと信じたいです。

本来こちらからの訴訟提起に対して、被告が調停を起こすというのは、二重起訴禁止(民訴142条)の理念に反します。被告が起こしているのは調停なので、そのまま同条の規定が適用されるわけではないですが、訴訟経済の無駄、応訴の煩わしさの防止、矛盾判断の禁止という同条の趣旨はそのまま調停のケースでもあてはまるといえるでしょう。

こちらから調停を起こすと、管轄はA社の本店所在地の裁判所になるので(過払い訴訟は原告の住所地も管轄にできますが、調停は申立人の住所地を管轄にできないため)相手の管轄裁判所にまで出向く必要があります。

このような無駄な訴訟費用を依頼者の方に立て替えていただくのは心苦しいものがあります。

A社が満額和解の提案に応じるとも思えないので、調停は不調に終わり、再度訴訟を起こすこととなります。

回収までにかなりの日数を要する事が想像に難くないです。

しかし、ご家族の方に秘密に進めていくにはこの方法しかないのではないでしょうか。

もっともこの方法すらも相手が管轄が違うのをいいことに意味のない逆調停を起こしてこないともいいきれないので依頼者の方が絶対ばれたくないという場合はそのリスクを説明したうえで訴訟を断念する必要があります。

恐喝とまでは言わないまでも、相手の弱みにつけこんで、権利行使を断念させる卑劣なやり口はいかがなものでしょうか。これが東証一部上場会社のやり方かと思うと悲しくなります。

ぜひ、姑息な手段ではなく、金利の取りすぎがおかしなくないというなら正々堂々と裁判で戦ってもらいたいと思います。