車の登録名義と自己破産

こんにちは、大阪京橋の司法書士小林一行です。
今日から一気に寒くなりましたね。いつもウオーキングを兼ねて自宅から歩いて事務所までいくのですが、風がすごいことになっていたので今日は思わずバスを使ってしまいました。。

ところで、最近自己破産や個人再生の手続きで車を残せるかといご相談が多いです。

この点、車のローンが残っていて、ローン会社が車の登録名義人になっている場合は、車をローン会社に返還するのが原則です(第三者弁済等、裏技もありますが)。

それを逆手にとってかこの前以下のような問い合わせがローン会社からありました。

ローン会社「○○さんの件ですが、残債権に充当しますので、司法書士さんを通じて車の方の引き上げにご協力お願いいたします。」

司法書士「車の登録名義は御社の方に残っているのですか?」

ローン会社「いや既に買主に移転されています。」

司法書士「それでしたら、御社の主張は法的に正当なものとは言えませんよ。この方は自己破産を申請する予定です。車は資産として破産財団の一部となります。そのような財産を一部の債権者に引き渡すのは偏波弁済となりますので。」

ローン会社「わかりました。対応を考えてまたご連絡いたします。」

と言って電話を切りました。

登録名義を買主に移転しているにも関わらず業者がこのような主張をするのは、一般的にはローン会社の名義のままになっているケースが多いからです。

確かにそのような場合は、所有権に基づき、車を買主から引きあげるという主張は法的に正当です。しかし、登録名義を買主に移転しているような場合は業者の引き上げに法的な根拠はありません。既に車の所有権を失っているからです。

確かに、登録名義を買主に移転していてもなお契約でローン会社に所有権を留保しているという事も考えられるでしょう。

しかし、そのような場合であっても、ローン会社への車の返還は拒むべきだと思います。なぜなら破産法49条の趣旨からすれば、破産手続き開始決定前に登録名義を有していない債権者は、破産手続きとの関係で車の所有権者であることを主張できないものと考えられます。

そうであるならば、破産の申し立て予定している時期に、ローン会社へ車を返還することは同条の対抗要件主義に抵触するからです。

業者は既に買主に名義が移転しているケースでも、返してくれればラッキーくらいの感覚でしれっと車の返還を求めてくるので注意が必要です。